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Home >  在宅医療の教科書 >  在宅医療で起こりやすいトラブルとその対策【後編】

在宅医療で起こりやすいトラブルとその対策【後編】


高齢者は体力や臓器の機能が落ちているため、ちょっとしたことで体調を崩しやすいもの。
よくある事故や体調不良について知識を持っておくと、いざというとき慌てずに対処できます。

在宅医療で起こりやすいトラブルとその対策、前編と後編に分けてお伝えいたします。

▷▷▷前編はこちら!▷▷▷

④熱中症になった

高齢者は、若い人に比べて体内の水分量が少なく、少し水分を失っただけで脱水になりやすい傾向があります。
またのどの渇きを感じにくい、食事量が減って食事からの水分摂取が減少する、といったことも脱水を助長します。

高齢者の中にはエアコンの冷気が嫌いという人も少なくありませんが、熱中症の予防のため、気温の高い夏場は適切にエアコンを使い、室内の温度、湿度を調整してください。
設定温度は28度、湿度は60%以下が良いとされています。

水分補給の方法としては、コップ一杯程度の水分を1日に数回、こまめに飲むようにしましょう。
熱中症の予防には水分と塩分を取るようにといわれますが、活動量の少ない高齢者の場合、塩分摂取量を増やす必要はありません。

蒸し暑い室内で過ごしていたときや熱帯夜の翌朝、ぼんやりしている、手足のしびれ、発熱、嘔吐がある、意識がもうろうとしているといった症状に気づいたら、急いで医師に連絡をしましょう。

⑤身体の一部が動かない、意識がおかしい

高齢者が注意したいトラブルは、脳卒中もあります。
脳卒中とは、脳の血管が破れる脳出血や、野の血管が詰まる脳梗塞といった脳血管障害を総称したものです。

脳卒中というと突然意識を失って倒れるというイメージが強いかもしれませんが、そうした激しい発作が起こるのは一部のケースにすぎません。
特に脳卒中は、手足のしびれといった軽い症状から始まることもあり、本人も周囲の人も発作に気づかずに悪化させてしまうことがあります。

脳卒中の症状は傷ついた血管の位置によってさまざまですが、処置が遅れるほど、血流が途絶えた部分の脳細胞が壊死し、重い後遺障害が残る可能性が高くなります。
脳卒中が疑われる症状は
・片側の手足を動かせない
・顔の片側に麻痺がある
・言葉が出にくい
・ろれつが回らない
・体が固まったように動かない…などです。

こうした様子が見られたときは早急に医師に連絡をしてください。在宅医の方で緊急搬送の手配をします。

⑥家族が介護に疲れて体調を崩した

在宅療養では、高齢者の介護をする家族の健康管理にも、十分に注意してください。

慣れない介護をすること自体、多少なりともストレスになるものです。
特に高齢者の心身の状態が不安定になってくると、家族はなかなか気の休まる時間を持てません。
さらに認知症で夜中に起きてしまう、夜間の排泄がたびたびあるといった場合は、家族の疲弊も色濃くなります。
そうした介護疲れによって体調を崩したり、うつ病を発症してしまったりする例も現実には少なくありません。

在宅介護をしていて心身の疲れを感じたときは、早めにスタッフに相談してください。
日中のデイサービスを多くして、その間にご家族が心身を休め、リラックスする時間を持つことも大事です。
家族の疲労が強いときは、介護保険のショートステイを利用して高齢者に施設で過ごしてもらい、まとまった休養を取ることも可能です。(レスパイト入院と言います。)

私たちのような在宅医療のチームは、要介護の人だけでなく、ご家族の健康にも常に気を配っています。
介護を担う人は決して一人で無理をせず、周りにどんどん助けを求めましょう。

救急時に慌てて救急車を呼ばないために

在宅で介護をしていると、家族から見て気がかりなこと、心配なことがいろいろと出てきます。
高熱が続いている、呼吸が苦しそう、食欲が落ちてきた、表情や様子がいつもと違う、尿が出にくい、便秘や下痢をしている…など。
特に「転倒した」「ぐったりしている」「意識が不明瞭」といったときには家族も気が動転して、慌てて救急車を呼びたくなるものです。

しかし、思わず救急車を呼んで搬送先の病院に入院となってしまうことがあります。
そうすると、元々患者本人が望んでいた在宅医療に戻れなくなることもあります。

在宅医療を導入した場合、救急時を含めて「連絡先は常に在宅医療クリニック」と覚えておいてください。
私たちは、クリニックの電話番号を大きく書いた紙を患者さんのお宅の電話機の前に貼っておくか、ご家族の携帯電話やスマートフォンにクリニックの電話番号を登録しておいてもらえるよう、いつもお願いしています。
▽▽▽千葉在宅診療クリニックへのお電話はこちらから▽▽▽

引用元

『1時間でわかる! 家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2017年11月2日
出版社:幻冬舎