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医療保険で受けられる医療とは


月1、2回の「定期訪問診療」が基本
在宅医療の基本になるのは「定期訪問診療」です。
これは主治医が計画的・定期的に患者さんの自宅を訪れて、診療を行うものです。例えば月に2 回であれば、「毎月1 日と15 日の午後2 時」など、決まった日時に医師が訪問します。
クリニックにもよりますが、通常は医師と看護師が一緒に訪問します。車の運転を担当するドライバーや事務スタッフが一緒に回るところもあります。
患者さんの自宅に着くと、患者さんの血圧や脈拍、体温などをチェックし、医師が診察を行います。さらに食事が取れているか、薬を飲めているかなど、生活面についても本人やご家族と話します。
この診察で、病院で処方された薬が多すぎて飲めていないとか、飲み込みが悪くなったといった様子が見られたときは、調剤薬局・訪問薬剤師と相談して、薬の種類や量、形状などを見直すこともよくあります。
定期訪問診療1 回あたりの滞在時間は、15~30 分のことが多いようです。それでも外来通院での〝3 分診療〟に比べれば、はるかに密度の高いコミュニケーションが取れ、患者さんやご家族も自宅という環境でリラックスしているため、不安や疑問を率直に話してくれる傾向があります。
また、定期的に訪問して患者さんの経過を細やかに診ているからこそ、夜間などに急に体調が変わったときにも、すぐに往診して必要な処置をすることができます。
臨時で「往診」に来てもらうこともある
定期訪問診療のほかに、患者さんやご家族の求めに応じて、医師が自宅を訪ねることもあります。それが臨時の「往診」です。
在宅医療クリニックは24 時間対応なので、心配なことがあれば、いつでもクリニックに連絡することができます。
連絡を受けたクリニックでは、医師らが電話でご家族に対応を指示したり、訪問看護師が患者さんの状態を見に行ったりすることもありますが、それでは不十分なとき、あるいは、状態が悪化して患者ん・ご家族の不安が強くなり、「医師に直接、自宅に来てもらいたい」という希望があるときには、往診を行うことになります。
患者さんやご家族の要望があればいつでも往診は可能ですが、臨時の往診は救急車とは異なり、駆けつけるまでに30 分~1 時間ほどかかるケースもあります。
ただし、救急車の場合は救急隊員が到着して搬送先を調べ、病院に運び、その患者さんを初めて診る医師が診療をするため、治療開始までに1~2 時間かかることもあります。それに対して在宅医の往診では、患者さんの経過をよく知る医師が直接、患者さんの元へ行きますから、結果的に往診のほうが医師の診療まで早くたどりつき、適切な治療に結びつくということも多々あります。
なお、患者さんが急に意識を失ったなどの理由で、救急搬送が必要と医師が判断したときは、在宅医から連携病院へ緊急入院の手配をします。
病状の重い人や医学的な管理は、「訪問看護」でフォロー
酸素の吸引をしている、胃ろうなどの経管栄養を行っている、人工呼吸器を装着している、がんの終末期であるなど、病状の重い患者さんの場合、療養病棟で行うような医学的な管理を在宅医療でも行っていきます。
定期訪問診療と往診、薬の処方等以外で、当院で行っている在宅医療の主な内容を挙げると、次のようになります。

  • 認知症高齢者の日常生活自立支援
  • 悪性腫瘍のターミナル・緩和指導
  • 在宅看取り
  • 褥瘡の管理
  • 糖尿病患者などの自己注射の指導管理
  • 中心静脈栄養の指導管理
  • 経管栄養の指導管理(経鼻、胃ろう、腸ろう、カテーテル)
  • 自己導尿の指導管理
  • 人工呼吸器の指導管理
  • 在宅酸素療法の指導管理
  • 悪性腫瘍の指導管理
  • 自宅での腹膜透析指導


認知症があって生活自立支援が必要な人や、上に挙げたような医学的な管理が必要な人は、医師の定期訪問診療のほかに、訪問看護を手厚くしていくと在宅療養が進めやすくなります。
例えば週に2、3 回の訪問看護を入れると、看護師が医療行為の多くをカバーできるうえに、介護をするご家族の不安や疑問にもきめ細かく対応することができます。
また訪問看護師とヘルパーなどの介護スタッフを合わせると、ほぼ毎日のように専門スタッフが患者さんの自宅を訪問することになり、多くの人の目で療養生活を見守っていくことができます。
状態が変わったら、そのつど医療の内容も見直し
在宅医療を始めるときには、患者さんがどのような医療を受けたいか、ご家族がどのような医療を受けさせたいか、という希望をよく聞いたうえで医療方針を立てます。
ただし、高齢の患者さんの状態は、時間の経過とともに徐々に変わっていきます。生活の自立度という点では、最初は自宅内を自力で歩くことのできた人が、足が弱ってきて車椅子になり、さらにしばらくすると車椅子に移るのも難しくなって、だんだんと寝たきりになる……。そうした変化が起こります。また肺炎などの感染症や骨折などをきっかけに、状態が急に悪化してしまうこともあります。
このように患者さんの状態が変わったときは、そのつど在宅医療の内容や方針も再検討します。
年齢やそれまでの経過によって、患者さんやご家族の側でも、希望する医療や看取りについての考え方が変わることがあります。それはそれで、まったく問題はありません。遠慮せずに主治医に希望を伝えてください。そのときどきの状態に合わせ、「患者さんの療養生活をいかに満足できるものにしていくか」を考え、支えていくのが在宅医療なのです。

引用元

『1時間でわかる! 家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2017年11月2日
出版社:幻冬舎