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Home >  在宅医療の教科書 >  在宅医療は「治療」だけではない!正解のない選択に寄り添う医療

在宅医療は「治療」だけではない!正解のない選択に寄り添う医療


「先生、病院に連れて行ったほうがいいのでしょうか」

在宅医療の現場では、この問いを受けることが少なくありません。

発熱したとき。食事が取れなくなったとき。呼吸が苦しそうになったとき。
病院であれば、検査をして診断し、治療方針を決める流れがあります。しかし在宅医療の現場では、必ずしも「病院へ行くこと」がゆういつの正解とは限りません。

そこには、その人がどんな人生を歩んできたのか、どこで過ごしたいと思っているのか、家族が何を大切にしたいのかという、それぞれの思いがあるからです。

在宅医療では、病気だけを診ているわけではありません。その人の暮らし全体を診ています。
例えば、90歳を超えた方が肺炎になったとします。
医学的に考えれば入院治療が望ましいかもしれません。しかし入院によって環境が大きく変わり、認知症が進行したり、筋力が低下したりする可能性もあります。

一方で、自宅や施設で過ごしながら治療を続けるという選択肢もあります。
どちらが正しいという話ではありません。大切なのは、その人にとって何が最も大切なのかを考えることです。
「できるだけ離れた場所で過ごしたい」
「苦しい治療は望まない」
「少しでも長く生きてほしい」
同じ家族の中でも考え方は異なります。

実際には、本人と家族が最期について十分に話し合えていないケースも少なくありません。だからこそ在宅医療では、体調が安定しているうちから繰り返し対話を重ねます。

もしもの時にどうしたいのか。何を大切にしたいのか。その答えを一緒に探していくことも、在宅医療の大切な役割です。
特に終末期になると、ご家族は大きな不安を抱えます。食事量が減る、眠る時間が増える、会話が少なくなる。
こうした変化を目の前にすると、「本当にこれでいいのだろうか」と迷うのは当然のことです。

在宅医療では、その不安をなくそうとするのではなく、不安を抱えながらも前へ進めるよう支えていきます。
訪問診療いや訪問看護師が何度も足を運び、状態を説明し、疑問に答え続けるのはそのためです。

そしてもう一つ、在宅医療には大切な特徴があります。それは、医師だけで成り立つ医療ではないということです。

介護職員、訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの専門職が日常生活の変化に気づき、その情報を共有しながら支えています。
「いつもより元気がない気がする」「食事の量が減っている」「少し息苦しそうだ」
こうした小さな変化に最初に気づくのは、医師ではなく介護職や家族であることも珍しくありません。その気づきが、重症化を防ぐ大切な一歩になります。

病院医療が病気を治すことを中心に考えるなら、在宅医療はその人らしい生活を守ることを中心に考える医療です。
だから在宅医療には、ひとつの正解がありません。

本人、家族、医療・介護の専門職が一緒に悩み、一緒に考え、その時々で最善と言える答えを探していく。
それこそが、在宅医療の本質なのかもしれません。